無痛無汗症にも色々程度があって、中には知的障害を併発している人もいる。
僕にはそれがなかった為、自ら『無痛無汗症です』と言わない限り、僕が病気を持っている事は見た目では分からない。
だからこそ、僕が無痛無汗症だと知る人間は、吉野さんの様に僕を『最強だ』だの『無敵だ』だの言い出す。
この病気の大変さを知らないから。
「北川くんってさ、死ぬの怖くないでしょ。 いいなぁ。 ワタシ、死にたいのに怖くて死ねないもん。 死ぬ時まで痛くて辛い思いするなんて絶対嫌だもん」
10代の若者は、何か嫌な事があるとすぐ『死にたい』と軽々しく口に出す。 自分もそう。 周りもそう。
吉野さんも、きっとそう。なんだと、この時は思っていた。



