「・・・ワタシね、北川くんに出会ってから、北川くんの病気について色々調べてみたの。 本当にないんだね、治療法」
吉野さんが、僕の告白に『イエス』とも『ノー』とも言わず、いつも通り話を逸らした。
だから、いつも通り返事をくれるまで吉野さんの話に耳を寄せる。
話しながら、吉野さんが止まっていた足を動かし始めた。 吉野さんの速度に合わせて僕も歩き出す。
「・・・ワタシね、医者になりたいんだ。 気を悪くしてもらいたくないんだけどね、北川くんの病気の事調べてたら凄く興味が湧いてきちゃって。 もっと詳しく勉強したいと思ったの。 本田さんがね、『今回の料金は相談料だけでいい』って言ってくれて。 『ワタシの腕なら調停に持ち込むまでもないから』って。 『余った貯金は勉強の為に使いなさい。 いっぱい勉強して、立派な医者になって、ワタシの身体に異常が見つかった時、アナタがワタシを診なさいよ』って。 だから、ワタシは絶対に医者になる」
吉野さんが目をキラキラさせながら語る。
「良かったね。 夢、見つかったんだ」
「うん。 奨学金の事も調べた。 医大進学の奨学金も充実しててね、各都道府県にあるんだけど、給付してくれた県の病院で10年働くと免除になるヤツがあって。 ワタシはどこの大学でもいいし、働くのもどこでもいい。 医療が学べて医師として働けるなら、場所は選ばない。 だから、ワタシが北川くんと一緒にいられる時間は、あと2年弱。 ワタシの頭で治療法を見つけ出すのは難しいと思う。 でも、何かしら発見出来たら、どんなに遠くにいても北川くんに情報流すね」
吉野さんが、遠回しに僕の告白を断った。



