傷む彼女と、痛まない僕。


 「いいよ。 大丈夫だよ。 1人で帰れるよ。 バイト先にも寄りたいし」

 しかし、サクっと断られた。 が、

 「だって僕、吉野さんの家の前に小山くんから借りたチャリ置きっぱだし」

 そう、僕は吉野さんに靴を履かせなかったばかりか、小山くんのチャリまでも置き去りにして来てしまったのだ。

 それに、小山くんとの約束だってまだ果たせていない。

 「・・・そっか。 じゃあ、行こ」

 「うん」

 折れてくれた吉野さんの後を追ってリビングを出かけた時、グイッと右手を掴まれ、

 「危ないと思ったら、あの子が何を言おうが力ずくで家に連れ帰って来い」

 父に耳打ちをされた。

 「当然。」

 小さくガッツポーズで応えると、

 「その意気だ。 あと一押しだぞ」

 父に頭をぐしゃぐしゃに撫で回されながら、良く分からない事を言われた。

 ・・・てか、気づいているのか?! お父さん。

 母の方をチラ見すると、母も薄らニヤついていて。

 お母さんにまでも気が付かれてしまっているのか?!! 超嫌!! めっさ恥ずかしい!!

 「行こう、吉野さん!!」

 吉野さんの背中を押し、恥ずかしさの余り、吉野さんを急かしながら一目散に家を出た。