傷む彼女と、痛まない僕。


 「じゃあ、ワタシの足が入りそうなものをお借りしますね。 今日は本当にありがとうございました」

 両親のやり取りにクスクス笑いながら頭を下げると、吉野さんがリビングを出て行こうとした。

 「待って、吉野さん。 どこに帰るの?? 吉野さんのお父さん、家にいるんじゃないの??」

 吉野さんを呼び止めると、吉野さんがクルっと僕の方に振り向いた。

 「家に帰る。 あの人が暴れて散らかした家を片付ける。 あの家はおじいちゃんとおばあちゃんの大事な家だから。 守るって約束したから。 それに、警察の人が家に様子を見に行ってくれて、父親とも話をしているはずだし、警察も弁護士さんも動いた今、自分の状況を悪化させる程、あの人も馬鹿ではないと思うから」

 自分にあんな酷い事をした人間の家に帰るという吉野さんは、本当に強い人だなと思う。 だけど、

 「送るよ」

 やっぱり心配。