傷む彼女と、痛まない僕。


 「間違いのない撰択だと思うわよ。 母親は吉野さんに危害を加えたりはしないんでしょう?? それに、祖父母に感謝の念があるのなら、愛する家族がいる方に行くのが最善だと思う」

 『それで良いのよ』と苦渋に顔を顰める吉野さんの髪を、本田さんが優しく撫でた。

 「吉野さんのお母さんの帰宅は何時?? お母さんの連絡先を教えてくれない?? お母さんを原告にするなら、お母さんの許可を得るのが大前提」

 「シゴトはあと30分くらいで終わると思います。 連絡先は・・・」

 母親の携帯番号を調べようと、吉野さんがポケットから取り出した携帯は充電が切れていた。
 
 「あ。 僕、機種一緒だから充電器取ってくるね」

 自分の部屋に戻ろうとした時、

 「ちょっと待って。 キミの部屋、30分だけ貸してくれない?? ちょっと、吉野さんと2人だけで話がしたいの。 周りに人がいると話し辛い事もあるだろうし。 余計なとこ、弄ったり見たりしないから」

 本田さんに呼び止められた。