傷む彼女と、痛まない僕。


 「ハイ、傷害罪。 110番。110番」

 『容疑者め』と言いながら、叩かれた頭部を撫でる父。

 「残ねーん。 証拠がなーい」

 父の態度にイラっとした本田さんが、今度は父の鼻を捻り上げた。

 「痛ってーな!! 3人も証人がいるだろうが!!」

 父が本田さんの手を振り払うと、

 「みなさーん。 ワタシは吉野さんを助けますよー。 そんなワタシが警察に行かなければならない行動をしたと思う方、挙手願いまーす」

 本田さんは父に不敵に微笑み、僕らに腹黒い質問をした。

 「ワタシは何も見てないわ」

 真っ先に父を見捨てる母。

 「僕と吉野さんも、何もなかったと思っています」

 吉野さんを巻き込み、僕も事実を隠蔽。

 「オイ、コラ!!」

 僕らにアッサリ裏切られた父が僕らの腕を掴む。

 しかしゴメンよ、お父さん。 僕らはお父さんたちの痴話喧嘩に付き合っている暇などないのだよ。 吉野さんを助けたいんだよ。