傷む彼女と、痛まない僕。


 「彼女は高校に行っていません。 フリーターです」

 僕らは悪さをしていない。 今を切り抜けられれば、後々身元の調査をされる事もないだろう。

 吉野さんが私服だった事を良い事に、嘘をでっち上げた。

 「フリーターというか、無職です」

 吉野さんが、僕の嘘に乗っかっる。 そうか。フリーターだと職場を聞かれ兼ねない。

 警察官を欺こうと、打ち合わせなしの嘘を2人で必死に炙り出していると、僕らを病院に連れていく為のパトカーが到着した。

 警察官に促され、パトカーに向かっている途中、

 「ありがとう。 北川くん」

 吉野さんが、警察官に気付かれない様に、小さく囁いた。

 「咄嗟に吉野さんをモラトリアムな人にしちゃってゴメンネ」

 そう小声で返すと、吉野さんがしょっぱい顔で笑った。


 吉野さんを護りたいと思った。

 吉野さんの笑顔を、守りたいと思った。