傷む彼女と、痛まない僕。


 「キミ、学校は??」

 吉野さんが唯一答えなかった問を、再度聞きなおす警察官。

 吉野さんは、ただ単に質問を聞き逃して答えなかったわけではないだろう。 答えたくないから、敢て答えなかったのだと思う。

 「・・・・・・」

 切り抜ける言葉を捜しているのか、吉野さんは俯きながら眉間に皺を寄せた。

 高校卒業に強い拘りを持っていた吉野さん。

 別に悪い事をしたわけではない。 けれど、学校にバレて『家庭環境に問題がある子』というレッテルを貼られた時、内申評価はどうなるだろう。

 学校側だって、進学・就職率を上げる為に余計な事を資料に書き込んだりはしないとは思う。 だけど、家庭環境に問題のない人間の方が推し易いのは確かだろう。

 吉野さんに、補導暦はいらない。