傷む彼女と、痛まない僕。


 「どうしてずっと逃げ出さなかったの?? 児童保護施設とか、シェルターとか、色々あるじゃん。 お母さんは?? 吉野さんのお母さんは一緒に暮らしているんだよね?? 大丈夫なの?? 今どこにいるの?? どうしてこんなになるまで・・・」

 傷だらけの吉野さんを見ると、胸が痛くて堪らない。

 「施設に入ったら、国に助けを求めてしまったら、バイトが出来なくなっちゃうじゃん。 母親は大丈夫だよ。 今日もシゴトに行った」

 吉野さんの言う通り、国に保護されてしまったらコンパニオンのバイトは出来ない。 吉野さんは、逃げたくても逃げられなかったんだ。

 「・・・お母さん、シゴトに行ったの?? こんな状態の吉野さんを置いて??」

 「そりゃ、巻き込まれて自分まで暴力振るわれたくないでしょ、誰だって。 それに、母がお金を稼いでくれないと生活出来ないもん。 ワタシのバイト代だけじゃ、とても無理だよ」


『誰だって、巻き込まれたくない』

 吉野さんの言葉に全然共感出来なかった。 他人ならそう思うだろう。 でも、自分の身の危険を案じて我が子を見捨てるなんて、僕には到底考えられない事だった。