「・・・ワタシね、通帳も印鑑も祖父母に預けているし、カードでお金を下ろすときも、明細票はいつも出さないのね。 残高が父親にバレたら全部取られちゃうからさ」
吉野さんの話が、いつもの様に逸れる。 だけど、黙って耳を傾けた。 だって、吉野さんの話は脇道に逸れようとも、必ず本線に戻ってくるから。
「・・・あの日、お金を下ろした時に、何故か間違って『明細票発行ボタン』押しちゃったの。 その時に細かく千切ってゴミ箱に捨てちゃえば良かったのに、『バイト先のシュレッダーにかけよう』って財布の中に入れたままにしてて・・・」
後悔で顔を顰める吉野さんの背中を擦ると、『ありがとう』と吉野さんが少しだけ微笑んだ。
「ワタシの部屋ね、鍵があるの。 初めてバイト代をもらった時に付けた。 部屋にいる時もいない時も絶対にその鍵はかけていて。 ・・・でもあの日の夜、『吉野の家の近くにいるから来て欲しい』って、小山から電話がきて。 なんか小山の様子がおかしくて・・・。 心配になって急いで家を出たの。 ・・・その時に、部屋の鍵かけ忘れちゃって・・・」
吉野さんが、悔恨に項垂れた。



