傷む彼女と、痛まない僕。


 「・・・そうじゃなくて。 臭いでしょ?? ・・・ワタシ、3日間お風呂に入れてないんだ。 それに、重いし」

 恥ずかしそうに、悔しそうに、唇を噛み締め、目に涙を滲ませる吉野さん。

 吉野さん、女の子なのに。 女の子が自分を『臭い』なんて、言いたくないに決まっている。 どんなにやるせない気持ちでいるのだろう。 

 「そんなしょうもない事気にしなくていいから。 それに、吉野さんに僕をおぶれて、僕に吉野さんを抱っこ出来ないわけがないでしょ」

 吉野さんの気持ちが苦しくて、ぎゅうと吉野さんを抱き寄せた。

 「・・・しょうもない事って。 ・・・否定しないって事は、やっぱ臭いんじゃん」

 吉野さんが身体をずらし、僕との間に空間を作った。

 「否定したらしたで勘繰るくせに」

 吉野さんが作った空間を潰すように、腕に力を入れて密着すると、

 「・・・こんな事させてゴメン。 ゴメンネ、北川くん」

 吉野さんが、僕の肩で泣いた。

 「僕が勝手にしてる事。 だから謝んないで。 それに、吉野さんが悪いわけじゃないでしょ。 逆にゴメンネ。 謝らせちゃって」

 そう言って吉野さんの髪を撫でると、いつも風に靡いていたサラサラの髪の毛が軋んでいて、どうしようもなく悲しくて仕方なかった。