傷む彼女と、痛まない僕。


 諦めの表情で開きかけた吉野さんの口を、慌てて自分の掌で塞ぐ。

 「何を言うの!?? 何で言うの!?? 吉野さんがこんなになるまで守っていた秘密なんでしょ!?? 僕を守る為?? だとしたら、自己犠牲も甚だしいよ。 僕がそんな事されて嬉しいと思う?? 申し訳ない気持ちになるに決まってるじゃん!! 吉野さんなら分かるでしょ?? そういうとこ敏感なコなんだから。 恩着せがましいよ!! 言っちゃダメ!! 絶対にダメ!!」

 『なかなか言いますね、北川くん』僕の指の隙間から小さな声を漏らすと、吉野さんが眉間に皺を寄せながら、申し訳なさそうに少し笑った。

 「邪魔すんなよ。 コイツが言うって言ってるんだから、言わせればいいだろうが!! さっきから邪魔ばっかりしやがって。 この赤の他人が!!」

 吉野さんの首根っこを掴み、僕から引き離すと、再度僕に馬乗りになる吉野さんの父親。

 「やめて!! やめて!!」

 再び拳を作った吉野さんの父親の腕に、吉野さんが絡みつく。

 『退け!!』吉野さんの父親にあっけなく振り払われた吉野さんは、近くの壁に勢い良く背中を打ち付けられてしまった。