傷む彼女と、痛まない僕。


 「北川くん!!」

 僕を庇う為、僕の前に出ようとする吉野さんを右手で制止し、左頬で吉野さんの父親のパンチを受け止めた。

 口の中を切ったのか、口端から血が出た。

 「・・・お願いだから帰ってよ、北川くん」

 僕の血を親指で拭き取りながら泣く吉野さん。

 「痛くないから大丈夫って言ってるじゃん」

 「それでも怪我するじゃん!!」

 「それでも僕は痛くない!! 僕は、吉野さんが怪我をするのが嫌だ。 吉野さんが痛い思いをしなければそれでいい!!」

 僕の血で汚してしまった吉野さんの指を、Yシャツの裾で拭う。

 「汚れ、落ちなくなっちゃう」

 こんな時にまで、僕の制服を気にして手を引っ込めようとする吉野さん。 そもそも僕の血なのに。 他人の事なんか気にかけている場合じゃないのに。 

 こんなに優しい吉野さんに、どうして吉野さんの父親はこんな惨い事が出来るのだろう。

 赦せない。