傷む彼女と、痛まない僕。


 「『一緒に逃げよう』って何だよ。 逃げるも何も、コイツん家はここ。 そしてオレはコイツの親。 だから、コイツのものはオレのもの」

 僕に向かっておかしな持論を言っては『ほら、さっさと言えよ。 オマエが言わないから、こんな事になってるんだろうが。 全部オマエのせい。 全部オマエが悪い』と吉野さんを指差しながら罵る吉野さんの父親。

 「吉野さんから何を聞き出そうとしているのか知りませんが、吉野さんのものは吉野さんのものですよ。 吉野さんがアナタに贈与しない限り、アナタのものにはなりません。 吉野さんは何も悪くない」

 吉野さんを肩で隠しながら吉野さんの父親に反論すると、

 「さっきから何なんだ、この部外者」

 苛立った吉野さんの父親が、またも拳を構えた。