傷む彼女と、痛まない僕。



 「一緒に逃げよう、吉野さん」

 吉野さんの手を握った時、吉野さんの父親が近くにあったハードカバーの本を手に取り、それを吉野さんの顔面目がけて投げつけようとする様が目に入った。

 「吉野さん!!」

 吉野さんの顔の前に手を伸ばし、飛んできた本をブロックすると、ちょうど本の角が腕に当たったのか、腕に掠り傷が出来、薄ら血が滲んだ。

 『ごめんねごめんね』泣きながら僕の腕を摩る吉野さんの頭を『全然平気だから』と言いながら撫でては、吉野さんの父親を睨み付けた。