傷む彼女と、痛まない僕。


 両手をガムテで縛られている吉野さんは、上手く床に手をつく事も出来ず、蹴られた勢いのまま床に倒れた。

 「何してんだよ!!」

 怒りに任せて吉野さんの父親の胸を押すと、吉野さんの父親が後ろに倒れながらしりもちをついた。

 それを横目に吉野さんの傍に寄り、抱きかかえながら手首に巻かれたガムテを剥がす。

 「大丈夫??! 吉野さん!!」

 「大丈夫だから!! 何にも心配いらないから帰って北川くん!! 早く!! 早く帰って!!」

 ガムテが剥がれて自由になった両手で僕の肩を押し、中庭に出られる窓から出そうとする吉野さん。

 そんな吉野さん越しに、体制を整えた吉野さんの父親の、今にも殴りかかってきそうな姿が見えた。