傷む彼女と、痛まない僕。

 
 『自分が行かないのだから、オマエは行かなくても良い』とでも言いたげな小山くん。

 「・・・・・・」

 また、何も言えなかった。 言い返す言葉ひとつ思い浮かべる事の出来ない僕は、尻尾を丸めて自分の席に逃げ帰る。

 なんてダサい人間なのだろう。

 小山くんの言い分は尤もだけど、だからって吉野さんを心配する気持ちは募ったままで。

 授業中、空いたままの吉野さんの席に目をやっては、もしかしたら体調不良じゃないのではないか?? いくら具合が悪くてもLINEの返事くらい出来るんじゃないか?? もし、違う理由なのであれば・・・。

 心がザワつき、居てもたってもいられない状況に。

 先生の話声は見事に右耳から左耳へと、どこにも引っかかる事なく抜けて行き、全く頭に入って来ない。

 だから、授業を受ける意味がない。