傷む彼女と、痛まない僕。


 「別に、何も??」

 そっけなく答えながら、小山くんがチラっと僕を見上げた。

 「小山くん、吉野さんの家知ってるんだよね?? 場所教えて。 ちょっと様子見に行きたいんだ」

 「先生に聞けば教えてもらえばいいじゃん。 あ、個人情報保護とかの問題で無理なのか。 じゃあ、先生に吉野の様子を見に行ってもらえばいいよ」

 机に頬杖をつき、意地悪に僕に細い目を向ける小山くん。

 「小山くんは吉野さんの事が心配じゃないの??! おかしいじゃん!! 3日連続で学校休んでるし、連絡しても返事来ないし」

 「北川は、何でそんなに吉野の事が気になるの??」 

 「友達だからだよ!! 当たり前じゃん!! 小山くんは気にならないの??!」

 「なるよ。 振られたとは言え、オレは吉野の事好きだから。 吉野の事、友達としか思ってない北川はオレほど気にはなってないはずだよね??」

 理系クラスにいながら、実は文系の小山くんに、根から理系の僕の揚げ足を掬い取るのは容易い事だった。