傷む彼女と、痛まない僕。


 「北川センパイに告白した事は、全く後悔してないんですよ。
 告らなきゃ、振られる事もなかったし、傷付かずに済んだのかもしれない。 ずっと胸の内に秘める淡ーい恋とかも、それはそれでいいと思うんですけど、告って振られて自分の中で区切りがついたんですよ。 『終わった。 ワタシはやり切った!! 頑張った!!』って。
 ハッキリ言って、今カナリ無理してますよ。 ホントは今にも泣きそうなくらい辛いんですけど、無理矢理明るく元気に装ってます。 それでも告白して良かったと思ってます。 やっぱり知っておいて欲しいですもん。 『ワタシはアナタの事が好きなんですよ』って。だから、むしろ小山センパイには感謝してます。
 北川センパイが、ワタシの事で小山センパイを責めたのであれば、申し訳ないんですけど、北川センパイから謝って仲直りしてもらえませんか?? 振られた可哀想な後輩のお願い事、聞いてくださいよ」

 大ちゃんが、両掌を合わせながら『てへッ』と舌を出した。

 「・・・どうして大ちゃんの良さが伝わらない人間がいるんだろう」

 こんなにも思いやりがあって、こんなにも優しい大ちゃんを、嫌う人間がなんでいるんだろう。

 「・・・え??」

 「僕は分かってるからね。 大ちゃんがイイ子だって事、僕はちゃんと分かってるからね」

 「振ったくせに。 北川センパイのアホ!!」

 目に涙を溜めながら僕に笑いかけると、大ちゃんはプレイヤーにタオルを渡しにコートに走って行った。