傷む彼女と、痛まない僕。



 教室に入ると、吉野さんはまだ来ていなくて、その前の席の小山くんは、隣の席の男子と談笑していた。

 「おはよう、小山くん。 今、ちょっといい??」

 会話に割って入る様に、小山くんに挨拶をする。 小山くんたちのお喋りが終わるのを待つ気になれなかったから。 だってきっと、小山くんが笑っているこの時間に、大ちゃんは心を痛めているのだから。

 「・・・おはよ、北川」

 機嫌が良いとは到底言えない僕が突然入り込んで来た事に、少し戸惑いを見せる小山くん。

 僕の態度があんまりだったのか、小山くんと喋っていた男子は自ら席を外してくれた。


 「・・・小山くん、僕より大ちゃんとの付き合い長いわけだから、大ちゃんが周りの女子からどんな風に思われてる子なのか分かってたはずだよね?? 大ちゃんの告白が上手くいかなかった事、面白がってる女子がいた。 ・・・ねぇ、小山くんは本当に、僕が大ちゃんに気がある様に見えてた??」

 小山くんの机に手を置き、若干の苛立ちの篭った疑念を小山くんにぶつける。