傷む彼女と、痛まない僕。



 大ちゃんの姿が見えなくなってから、僕も体育倉庫を出て、部室に向かう。

 部室のドアを開けると、みんなは既に着替え終わって帰った後だった。

 小山くんの姿もない。

 小山くんと話したかったのに。

 とりあえず、ジャージから制服に着替え、パンツのポケットに入れていた携帯を取り出す。

 画面に小山くんのアドレスを表示し、タップする。

 携帯を耳にあて、10コール待つも、小山くんは出てくれなかった。

 仕方なくLINEメッセージを打つ。

 『大ちゃんに告られたよ。 小山くんに煽られたって言ってた。 なんでそんな事したの?? 僕が大ちゃんにそんな気ない事、小山くん知ってたよね??』

 僕のメッセージがすぐに既読になって、

 『ごめーん。 今電車乗ってて電話出れなかったわ。 いやー。 口ではそう言って、本当は北川も大ちゃんの事好きなのかなーって思ったからさー。 お似合いだと思うんだけどなー』

 大ちゃんが泣くほど傷ついた事を知らない小山くんから、随分のほほんとしたメッセージが返って来た。

 小山くんに悪気はなかったのかもしれない。 でも、軽い気持ちで人の心を揺さぶってはいけないと思う。 

 明日、小山くんと話そう。 LINEで済ませて良い話じゃないから。