嫌なアイツ





『愛莉。心配を掛けさせてごめんね。俺はもう何処にも行かない。これからはずっと愛莉の側に居るから…もうお前を泣かさない。』


だから泣かないで…



翔は私をきつく抱き締め言った。




まだ…

私は夢を観てるの?


それとも幻?



私はまだ信じられなかった。



翔の声も…
香水の匂いも…
ずっと抱き締めて欲しかった温かい胸も腕も…



みんな私の創り出した幻…


私はそう思ってた。




【愛莉…。愛莉?】


呼ばれても返事もしない…

アクションもない…



そんな私を翔は不安に思ったのか?


何度も私の名前を呼んだ…



私は夢の中でも幻でもいい…


ようやく逢いたかった翔に逢えた。


ただそれだけで嬉しかった。




「翔…。やっぱさ…愛莉ちゃんには強烈すぎたんじゃねぇ~の?愛莉ちゃんなんもリアクションしねぇ~じゃんか!」



耳だけはまともに機能してる私の耳に由良さんの声が聞こえた。



強烈?

アクション?



・・・・・・・・。



由良さんの言葉をようやく理解した私。


私は翔に抱き締められてる手を解き翔の顔を観て言葉より先に手が出てた。