そこまで考えて、目の前に立つ男子が葉菜の言葉を待つように、ちらちらとこちらを見ていることに気づいた。
 あ、返事。
 告白の、返事をしなくちゃ。
 葉菜は頭をさげた。

「ごめんなさい。いま、誰かと付き合うとか考えられないの」

 レンのお陰で。
 誰かとお付き合いしている、なんていった日にはどんな仕打ちが待っていることか。


 教室に戻って席に座わると、あきが興味津々といった顔で出迎えた。

「告白?」

「うん、まぁ」

 照れ笑いを浮かべると、となりの席から突き刺さるような視線を感じた。その恐ろしい視線の主はレンだ。
 同じクラスでとなりの席とか、これ以上の幸せはありませんです、はい。
 葉菜は心のなかで涙する。

「で、オーケーしたの?」

「するわけないよ。そんな余裕ない」

 恋愛なんて諦めてます。
 レンがいる限り。
 いまだって、勉強しながら耳はこっちの会話に傾けているに違いない。余計なこといって、あとでなにをいわれるかわかったものではない。

「葉菜、最近変わったよね」

「え?」

 あきの言葉に首をかしげる。

「男子に耐性ついたというか。前は男子に話しかけられると困った顔してたけど、いまは誰とでも普通に話してるじゃん」

「あ……うん、そうかも」

 同じ年頃の男子に抵抗感みたいなものがなくなった。