「いい!」

 慌てて拒否を示した。
 それなのにレンは満足げな顔で、

「そうか。やはりお前はオレに抱かれたかったんだな」

「ちっ違う! 否定の意味を込めた『いい』だったの!」

「女は素直が一番だぞ」

 葉菜が顔を真っ赤にして懸命に否定する様が可笑しくて、レンはクスリと笑う。

「今日はこれで我慢しろ」

「?」

 顎を掴む指先に力を入れて葉菜が逃げないようにすると、上から唇を塞ぐようにキスをした。

「!」

 我慢しろ。
 じゃなくてあなたがキスをしたかったんでしょう!?
 こんなの不意打ちだ! ずるい~~~‼
 変なことはさせないってさっき誓ったことが、もう破られている。
 なかなかキスから解放してくれないレンの唇にパニックになった葉菜は彼の広い胸を押した。自分よりも身長が高いレンがそれで動くわけもなく、キスをしながら唇の上で面白そうに彼が笑ったのが葉菜にもわかった。
 むかつく!
 どうしてこうレンに振り回されてばっかりなのっ!
 ファーストキスだけじゃなくって、セカンドキスまでも奪われた……!
 悔しさと屈辱の間で悶々としていると、レンの唇が開いて、葉菜の下唇をなぞるように温かい何かが舐めた。
 も、もしかして舌……?
 背筋がぞくぞくすると共に防衛反応が働いて次の瞬間、上下の唇に力を入れてがっちり結んだ。

「おい、口を開けろと誘ってるんだからこういうときは開けろ」

 不機嫌そうに唇を離す。
 レンは私にディープキスをしようとしている。

「む、無理」

 目の前の青い瞳をから目を反らし、やっとのことでそう答える。
 再びキスをしようと顔を近づけてくる。そこでドアのほうからガタン! という音が聞こえてきて、直ぐさま身を離したレンが鋭い視線をドアに送った。