「ち、違う、私は……! あ……あれ?」

 気が付くと私はベットの上に寝ていた。
 召使いって、今のは夢……? 
 いかにも召使いらしき格好の自分が、レンの部屋を掃除するなんて、夢でもいやだよ。
 でもなんで、私はベットに寝ているんだろう?
 鼻にツンとくる消毒液のような臭いが、あたりに漂っている。
 視線を泳がせて、ベッド脇の椅子に座り、小説を片手に読んでいる委員長を見つけた。

「やっと起きたか」

 深みのある静かな声。
 げっ。
 ベッド脇に座っていたのは、てっきり委員長だと思っていたのに小説から顔を上げたのは、メガネを外したレン。青い瞳が真っ直ぐ自分に向けられていた。

「あ、う……」

 レン恐怖症の葉菜はたちまち言葉を無くす。

「保険医の話しだと、寝不足による貧血だそうだ。寝てないのか」

 読んでいた小説を閉じると、ため息混じりにそういった。

「そっか……私、始業式の間に倒れて……」

 先ほどから消毒液の臭いがするここは、学校の保健室のようだった。

「俺がここまで運んでやったんだからな。感謝しろ」

 組んだ長い足を組み替えて、ふんぞり返っている。

「………」

 そう傲慢な言い方されると謝る気も無くなるんですが……。

「ど、どうも……」

「なんだ。それだけか?」

「……は?」