「毎度ぉー♪」
威勢のいい、愛らしい声が、疲れた侍を癒す。
「嬢ちゃん、名前はなんだい?いい声してるじゃねぇか!」
「つぼみでございますー!」
「つぼみちゃんかい!うちの息子はいらないかい?」
座っている、侍の1人が声をかける。
「あいにく、つぼみは誰にもやらないと決めておりますのでねぇ!」
「ちぇー!女将さんに言われちゃあ無理だなぁ!」
笑い飛ばしながら、お金を払っていく侍は、毎日、笑顔で店を後にする。すごいな、疲れてるのに、とつぼみは思うのであった。
「殿様じゃぁ!道を開けろ!」
誰かが叫び、退けると、馬が走り去っていった。
「殿様、居たの?今。」
つぼみが、女将さんと呼ばれる、母、加代に尋ねる。
「そうよ、お前さんと同じ年頃の息子がいるんだよ。殿には。」
「へぇ!そうなの!遊びたいな!」
15歳のつぼみは、見た目よりも、考えが幼くて、休みの日には、近所の幼子たちと外を駆ける始末であった。