そしてその傍ら。

「……」

同じくダークのスーツに身を包み、ネクタイを締める小柄な女性。

スーツの内側には、この世界では見かける事のない二挺拳銃ヴィオラとクローリス。

ハニーブラウンの髪を揺らすその姿は、男装の麗人のようですらあった。

リィファ=グリフィノー。

本来この世界の人間ではない彼女は、故郷に帰れば姫君の地位にある女性だ。

しかしその地位を捨て、彼女はこのインフィニティ・セクターに籍を置いた。

ただ愛する青年のそばにいたい。

それだけの理由で、地位も平穏な暮らしも捨てて。

「本当にいいのかしら?リィちゃん…いえ、エージェント・リィ」

軽く腕組みして、蒼い髪のロシア人女性、アリスカ・タナカが言う。

いまやこのインフィニティ・セクターの統括責任者だ。

「訓練期間を経て、貴女は正式にこのインフィニティ・セクターのエージェントとして認められた訳だけど…監視付、この世界に留まるという条件付きなら、今ならエージェントをやめる事もできるわ。無理に危険な世界に首を突っ込む事はないのよ?」

「…いえ…アリスカさん…局長」

リィは緩々と首を横に振った。

「何も後悔はない…私は自分の意志でこの場所に立っている…」

彼女はサングラスをかけた。

「これが私の選んだ道だから…」