「あら、おはよう」

お母さんの声が台所から聞こえる。
お父さんはもう、家を出たようだ。


「おはよー。……おい、弟よ挨拶はないのか」


「…………」

なんと薄情な弟だ!
弟は、ただ黙々とパンをかじっている。

「姉ちゃん、またその格好…高校デビューすると思って期待してたのに」

弟よ、イケメンだからって調子乗るなよ。私の方が家庭内の権力は上なんだぞ。

「悪かったね、いつもと同じ格好で」


けど、イラっときたが返事をしたので許してやろう。


「はぁ……朝から絡まないでよ。お母さん行ってきます」


あ……言い逃げだ。

「いってらっしゃーい♪ほらっ香歩も早く行きなさい!」


「えっ!私まだご飯食べてないっ…」

「もうっ急いで食べなさい!」


まぁ、そんなに急ぐこともない
と思うんだけどな。


あ、そうか。高校に入ってから電車も使わなくちゃいけないから急かすのか


「なっとく…」


ゴクンと最後の一口を食べ、
鞄を持った。

「お母さんいってきまーす!」


「気をつけるのよ!」


いやいや、何に気をつけるの?
こんな地味女、心配しなくても誰も手をだしてきやしないよ。