昨日の雨はそのまま今日の朝まで降り続いて、今もしとしとと降り注いでいた


俺はチャリで行けないから仕方なく傘をさして徒歩30分の俺の家だったところ……里絵の家に向かって出発した


土曜日の朝なのに、雨のせいで人通りはかなり少なく、どんよりとした重たそうな雲はどこまでも続いている


……里絵起きてないかな


まだ朝の8時だ。今日は部活が10時からあるから早めに帰りたい



俺は重い気分のまま足を早めた



ピンポーン


チャイムを押しても、里絵はなかなか出てこなかった


なかはいらいらして、ドアを引っ張るとドアは開いていて俺は閉まっていると思って力をいれていたからつんのめりそうになった



「…んだよ、開いてるじゃん」



俺はクツを脱ぐと、リビングへあがった


「ん……やまと?」



ソファーに寝ていた里絵が上半身を起こした。裸だった。リビングには知らない裸の男がずっすりと寝ている


「久々ね…ちょっと待って」



里絵は裸なのに何も気にせず、バスローブを簡単に羽織るとかったるそうに棚をさぐりはじめた


……呼んだんなら準備しとけよ



なんだか無性にいらつく。毎回のことだ。里絵が男といないときなんてないのに、今日はやたらいらいらする


里絵が、あったあったと茶色い封筒を取り出してこちらを振り返る


「あら、和またイケメンになったんじゃない?やたら怖い顔してるのが傷だけど」


茶色い封筒をこちらに向けてきた


俺が受け取ろうとすると、いきなりすっと茶色い封筒を引いて…俺に抱きついてきた


「やめろ!!」


俺は里絵を突き放した。里絵はくすくす笑ってまた寄ってきた。赤い口紅がめだつ


「やぁね、思春期ってやつ?あんたも早く大人の男にならなきゃ…なんなら、わたしとやる?」


俺は茶色い封筒を無理やり奪い取ると、


「金、ありがとう」


とだけ言って玄関へと向かった。いそいでドアを飛び出す



醜い。大人は醜い


母さんを捨てた父さんも、俺を捨てた母さんも、父さんと結婚しときながら父さんがいなくなったとたん男と遊ぶ里絵も


あんな風になるくらいなら、俺は大人になんてなりたくない……


俺は、傘もささずに家まで走り続けた