プルルルル…いきなり、電話が鳴って俺はハッとした。明かりをつけ、濡れたままいそいで家に入る



里絵の家



電話番号にそう示されている。俺はため息をつくと受話器をとった


「……もしもし、」


「あ、和〜⁇今月のぉー、生活費取りにきてーあんまり待たせないでヨォ?」


かなる酔ってるけど、いつものことだ。毎月月の終わりに生活費を取りに、実家に戻る


でも、そこに父さんはいない……父さんは俺が高校入学から少しして、肝臓ガンで死んだ


母さんと別れてから、急激に酒を飲むようになったのが原因だ。たっぷりの保険金と、俺たち家族が住んでいた家、そして高校生の俺が里絵には残された


俺はすぐに一人暮らしするといった。家族をバラバラにした女と暮らしたくない


里絵は、それなりにサポートはしてくれた。けど、それはどちらかというと、とっととでてけって感じだった


毎月、しっかり学校に金を払ってくれているしたっぷりと生活費もくれる


里絵は、水商売で働いていた。父さんとの出会いも、バーだったらしい。さすがに美人だけあってかなりの年収だろう。好きかってやってくれている


「ああ、わかった。」



短く返事をしてすぐに電話を切る



憂鬱な気分になった。また、里絵の家に行かなきゃいけない…



一枚だけ、壁に貼ってある家族の写真。あの朝のあたりの海を背景にした、俺の家族の最後の写真だった



……早く、梅雨が明けないだろうか…


家族が壊れた梅雨の雨の日。毎年梅雨になると思い出す


早く、メノウを捨てたいのに……凛のことを思えば思うほど、捨てられなくなる自分がいた