俺は小学生の頃…家族が大好きだった。お母さんはものすごく優しくて、その上友達のお母さんの誰よりも美人だった
雅は4歳下の妹で、喧嘩もたまにしたけど基本俺は雅を可愛がってたしいつも一緒だった
お父さんは、一流企業のサラリーマンで単身赴任していたからあまり会えなかったけど、帰って来たらいつも遊んでくれたし、お父さんは料理がすごく上手だったんだ
俺は中学2年生までは、そんな幸せな家庭に育った……そう、父さんが母さんを裏切るまで
4年前のちょうど今頃だった…父さんが他の女を作っていたのが母さんに知れたのは…
「このひとでなし‼︎あなたなんか最低よ‼︎」
雨が外に降る中、母さんはヒステリックに泣き叫んだ。どうして、わたしを裏切るようなことを…子供達をどうするの…その女と別れて…
父さんはただただ、すまないとだけ言い続けた
そして、父さんは雨の中その女のもとへと行ってしまった。また少ししたら、離婚届をもって帰ってくる、とだけ言い残して…
母さんは父さんがいなくなると、泣き崩れた。俺と雅は何もできずに、ただ呆然としていただけだった
「あなたには、この青が似合うわよ」
「でも、それ父さんの…」
「いいから、これは和にあげる。私があの人に買ったやつなのよ。もうあの人に必要ないわ。」
父さんが出て行った次の日のことだった。母さんは家にまだある父さんのものを片付けていた。とりあえず落ち着いたように見えた。そのときに、青いメノウのネックレスを見つけたのだ
母さんはそれを俺に渡しながら言った
「……いい?和は女を好きになってはいけないわ。私みたいに…和が女の人を傷つけるのは、許さないわ。女の子と遊ぶぐらいならいいわよ。でも、愛してはダメよ…和はあんなやつにはさせない……」
最後の方は独り言のように、母さんは俺に呟いた。母さんはたった一日でひどく変わってしまった。優しかった母さんの言葉とは思えないし…あんなに綺麗だった母さんの目は赤く腫れ、顔色は青白い。なんだか、昨日よりすごく小さく見えた
父さん、ひどいよ……母さんをこんなにするなんて……
女の人は愛してる人にうらぎられると、こんなにも変わってしまうのだ
そう知ってしまった俺は、父さんを恨むとともに、恋愛に対して恐怖を抱くようになった