俺は、凛を家まで送った後チャリにのって家に向かった。全力疾走する。
……やべ、凛、何か気づいちゃったかな
少しでも弱さを見せた自分がすごく情けなかった。…たぶんまだ何もわからないだろうけど、漠然とは何かを感じたはず
真希に凛と二人でボール磨きをしてくれって頼まれたときは普通に嬉しかった。好きな人なんだから当たり前だ…でもこんな風になるとは思わなかった
凛は、俺の涙を知っている……
そして、凛が抱えてる傷の大きさは想像以上だって、俺も今日知った
海は……広い気持ちにしてくれる
凛のあの言葉。凛もやはり、海に癒されにあの朝あの場所にいったのだろうか…
ポツリ
自転車を漕いでる自分の手に雫があたった。次々に上から雨が降ってくる
あの朝と同じとは思えない真っ暗な海。俺たちは海で出会ったんだよな。あの朝はまた一段と海は優しい青をしていた
細かくしっとり濡らすような雨だった。梅雨は嫌いだ…気分まで落ち込む
意外に早く家についた。すぐにチャリを置いて鍵をかけると、二階に向かった。風邪をひいたらこまる
アパートの二階の一番はしの部屋につくと、鍵を開けた……中は静まり返っていて真っ暗だ。ドアを閉める
いつものことだ……明かりをつけて、夕飯の支度をすればいい。その後に風呂に入って洗い物をして……
なんでだろう。今日は…やたら、悲しい
雨粒が髪の毛からほおを流れる…涙と一緒に、……
梅雨は嫌いだ…悲しい気分になる……
「母さん、父さん…雅(みやび)」
俺は真っ暗な中一人で涙を流していた