西島くんはバスケ部のユニフォームで、練習をしていた。素人が見てもわかる。すごく上手だ
いつもぼんやり授業中座ってる姿しか見たことなかったから、汗を流しながら機敏に動く西島くんは別人のように輝いていた
バスケ部の男子はみんなすごくかっこいいけど…西島くんは特別に見えた
「凛、ドリンク作りにいこ!……凛?」
「あっ、うん!」
あわてて南さんのあとを追いかける。西島くんに見惚れてしまった…ちゃんと仕事しなきゃ……
「ねぇ、凛……」
ドリンク作りをしていると、南さんが珍しく少し暗い声で話してきた
「ん?」
「いいにくいけど…凛、あんまり学校楽しめてない感じがするから…」
トン、と胸をつかれたような気がした
「いつもなんだか私たちと一歩距離置いてる感じがするんだ…みんなのこと、名前呼びしないし、笑えてないよね。みんなはそっけないって思ってるみたいだけど、なんか……」
南さんはそこで言葉を切った。わたしは、ぴくりとも動けなかった。息すらしているかわからない。
そんなわたしの様子に気づいたのか、慌てて南さんが笑った
「き、気のせいだったらごめんね!…あはは」
わたしは、うつむいた
……気のせいじゃないよ、南さん……なんで、南さんはそんなわたしに気づいたの?なんで優しいの?
南さんが優しく笑った
「凛…わたし聞くから。いつでもいいから…。わたし…凛の気持ちわかるんだ。なんか前のわたしを見ているみたいなんだ…」
わたしははっとして顔を上げた。南さんは少し悲しそうに下を向いている
……わたしはバカだった。