過去形だったし、相川とその親友との間に何かあったのは確かだった。


「西島くんは、バスケ部だったんだね」


それ以上触れられるのが嫌なように相川は言ってきた


「うん、今から部活。シューズ忘れたから…。相川、部活テニスにするの?」


「……まだ、一週間は部活見学だって先生言ってたから決めてないかな」


「そっか…」


沈黙が流れた。海を見る


「……相川、また聞かせてよ。そのラケットの話」



知りたいんだ、相川のことって言葉を飲み込んだ。なんか、わからないけどほっとけない気がするんだ



「西島くんがあのメノウの話を教えてくれたらね……」


意外な返事に今度はこっちがつまる番だった。



相川が微笑んだ



張り付いた笑みじゃない、ほほえみ……優しすぎて悲しくなるような、夕方の海みたいなほほえみだった


「じゃあ、部活だから」


俺はシューズを持って教室を後にした





「ヤバイ」


俺はつぶやいた。恋に落ちるって、こういうことをいうのか。



間違いなく、あのほほえみを見た瞬間、俺は相川 凛に恋に落ちたんだ