ナースステーションの先にあるホールでひろこと食事する。
暖かい日差しにまどろみそうだ。
「疲れたでしょう、お義兄さん。朝早かったんでしょう?」

「6時13分のぞみ」
治の頭の中ではめまぐるしく他のことを考えている。
「なこ、35だって?」
「そうなのよ、なこにはほんとに力になってもらって去年アキが亡くなっ
てからは結婚資金まで全部援助してもらってるのよ。70万円もよ」

「結婚とかそう言う話はなかったの?」
「はっきり言ってそれどころじゃなかったわこの5年間。なこには
ほんとに迷惑かけたから何としても幸せにと願ってはいるんだけど」
「今もいい人いないの?」
「いるわけないでしょう。そんな暇がなかったのよ、あの子」

そこに物静かな中肉中背の男が現れた。
「あら、竹山さん!来てくれたの、助かるわ。あ、こちら主人のおじさん。
治さん、こちら亡くなったアキの御主人」
「はじめまして、?」

「事情があってリオとカイは私が引き取って今は育ててるけど。
そのうち、ね?いい人よ」
意味深だ。少しいぶかしげに首をかしげると、

「アキがあんな子だったのにお嫁に下さいと主人に頼みに来たとき主人は、
『こんな娘でいいのか?ほんとに結婚してくれるのか?』
と涙流して喜んでくれたわ」
なるほど、治は納得してうなづいた。