「勇ちゃんまたね。明日遊ぼうね」

もう、この愛らしい零ではなくなった。長かった髪はばっさり切り、ショートボブにしてしまった。青白い顔はこけていて、唇はカサカサしている。大きい目、長いまつげ、そしてその目は昔はくりくりとしていたのに、今、仲の良い友達と家族以外に向ける目は、腐ったジャガイモでも見るかのような目だ。

「なあ、零。お前さ、昔しょっちゅう俺につきまとってたよな」

「そうだったんだ」

「それで、昔俺のこと好きだったみたいだけど、今の俺に対する好意ってなんパーセント?」

「バカじゃないの?あんたに対する好意なんてこれっぽっちもないよ。0.1%もね..... 」

「そうかい。でもさ、お前大体の人見る目さ、腐ったジャガイモでも見るかのような目だよな」

「一番良いのは『親友』、次が『友達』」

「お前は、俺のことどういう目で見てるわけ?」

「せいぜいワーストから二番目ってとこ」

「何?」

「ワースト一(いち)が『死後三年は経った白骨死体』。次が『冷蔵庫に入れておいたら自然に腐った異物』」

「..... 俺は『異物』なのか」

「まあね」

「ひどくないか?」

「そう?」

「お前さ、好きな人っていんの?」

「いない」

「みんないいやつだとは思うんだけどな」

「みんな手に負えないバカばっかり、消えてほしい」

「そこまで?」

「だいたいさ、マシなやついないじゃん。まるで動物園の猿みたい」

「ふーん」

「じゃあ私家に帰る。落ち着いて本も読めやしない」

「ちょっと待て、ほんのちょっと__」

「すぐに終わらせてよ」

「家に来い、遊んでやる」

「嫌だ。あんた、私のことナメてない?何歳だと思ってんの?おままごとなら私抜きでやって。もうお子様じゃないの」

「いいから来い、Wiiだよ、やんのは」

「Wii?何それ、何かは知らないけど、そんなばかばかしいことしてる暇あったら本読みたいんだけど」

「楽しいんだぜ、やろうよ」

「嫌だ。帰る」

「零」

「何?」

「いや別に。なんでもない」

「だったら話しかけないで、時間の無駄」

「はいはい、無駄無駄おばさん」

「殺すよ」

「すみません」

「じゃあね、二度と話しかけないで」

「..... さよなら」






次の日

「零。遊ぼうぜ」

「話しかけんなっつったでしょうが」

「そんなかたくなに断らなくてもいいじゃねぇか」

「あのさ、ホントに殺すよ。私、一応防犯用に銃持ってるからね」

「でも、お願いだって。遊ぼうぜ」

「私本読みたいんだけど。正二と遊べばいいでしょ」

「正二最近付き合い悪ィんだって」

「今日は違うかもしれないじゃん。はい、そうと決まったら行く!」

「やだね。零、遊ぼう」

「うるさい。白骨死体にするよ」

「おーねーがーい!」

「ッるっさい。家でパズコレ(パズル&コレクション)でもやっときゃいいでしょ」

「パズコレもう飽きたんだよ、なあ、遊ぼうぜ」

「嫌だっつってんでしょうが。パズコレ飽きたら他のゲームインスト(インストール)しときゃいいでしょ」

「はい」

俺は、もう諦めることにした。