眉根を寄せて困った顔をして、平沢が問題のズボンを手に取ってみる。


「3cmくらいしか下せないけど、それでいい?」


「えっ?5cmくらいは下ろしてほしいって言ってたけど…、無理ならそれでしょうがないと思います…」



雰囲気は一変して、緊迫したものになった。

ニッパーでズボンの裾をほどき、裾上げをしなおす平沢の集中を乱さないように、誰もが無駄な口を利けず、被服室の中は静まりかえる。



「…このズボン、十分股下長いと思うんだけど…」


そんな中、誰かがポツリとつぶやいた。


「それなのに、丈が足りないなんて…。古庄先生、どれだけ足が長いの?」


「あれだけイケメンな上に…スタイルもいいなんて。ホントに嫌味なくらいカッコいいのよね…」


他愛のない会話を聞きながら、真琴はフフッと笑いをもらした。


高校時代、ラグビーをしていた頃の古庄の写真を思い出して。
あの真っ黒で厳つい熊みたいな古庄を見ても、同じように「カッコいい」と言うだろうか。



「なあに?先生。『そうそう、その通り』とでも思ったの?」


「そりゃ、そうよ。古庄先生のカッコよさは、人智を超えてるんだもん」