きみが死ぬまでそばにいる

 
「あっ……そうなんだぁ。そっか、そうだよね、ごめんね」

 三原さんははっとしたように言うと、永塚さんと共にそそくさとわたしの前から消えた。
 二人は確実に何かを勘違いしている。誤解を解こうと思ったが、陸の得意気な顔を見ると呆れてそんな気も失せた。

「椎名くん……どういうつもりなのかな?」
「すみません。でも、先輩が俺のこと避けるから、ですよ?」
「それは……」

 誰のせいだと思っているのか。

「旅行も来てくれないのかと思ってた。だから、嬉しいです」
「泉から聞いて、驚いたよ。椎名くんのプランが採用されたって……」
「先輩のおかげです。この旅行、先輩と一緒にいくと思って、考えましたから!」

 相変わらず、腹が立つほど純真な笑顔。
 陸は知らない。わたしがどれほど弟を妬んでいて、醜い女なのか。

「……仕方ないな。許すのは今日だけだからね」

 わたしを好きだなんて、見る目がないにも程がある。
 かわいそうな子。ならば、せめてわたしも最後まで演じよう。きみが好きになった、優しい先輩を。

「わたし、熱帯魚が見たいな」

 笑いかけるのは、今日で終わりにする。きみは、わたしの弟だから。