きみが死ぬまでそばにいる

 
 午前中は江の島の主な観光名所を回った。神社、展望台、洞窟、その他諸々。そして少し歩き疲れてきた頃、海の見えるお店で昼食をとった。
 とりあえずは何事もなく過ぎて、わたしは少し安心していた。
 部長と泉は相変わらずだったが、あからさまにいちゃついているわけでもないし、陸とも朝の挨拶以上の接触はない。このまま平穏無事に、旅行を終えられるかもしれない。そんな甘い考えが、わたしの中に生まれ始めていた。

「それじゃあ、後はしばらく自由行動で。四時に入り口に集合。時間厳守な」

 部長の号令がかかったのは、午後のメインである水族館に着いてすぐのこと。

「菅原さん。良かったら、私たちと一緒にイルカショー見ない? アシカもいるんだって!」

 誘ってくれたのは、同じ二年生の部員である三原さんと永塚さんだった。彼女たちは泉と部長が付き合い始めたことを察して、気を遣ってくれたのだろう。
 気持ちは、ありがたい。しかし、すっかり気疲れしていたわたしは、体のいい理由をつけて断ろうと思った。

「ありがとう。でも――」
「残念。菅原先輩は、僕と回るんです」

 横から突然現れた陸に、声を上げる間もなかった。