トンネルの暗闇から抜けると、
懐かしい風景が目に飛び込んできた。

開放的な青い空。
一面に広がるたんぼの緑。
向こう側に見える錆びたバスの停留所。

なにもかも、そのまんまだ。

蒸し暑い中古トラックの中、父が隣で汗を拭きながら運転している。

父の首筋に汗がなぞるように流れた。
それは雨の日の窓ガラスに沿って
流れ落ちる雫をイメージさせた。

じっと見ていると、父が目だけを動かしてこちらを見た。
「ん、どうした」

「なんでもない」
晶はラムネをくいっと飲んだ。
この暑さで生温くなっているラムネは
当たり前だが、おいしくない。


急に車内が、がたんと揺れた。