転倒するかと思って目をつぶると
身体には何の痛みも衝撃もこないかわりに、
ただシトラスの様な爽やかな香りと
柔らかな温かさに包まれた。


「…危ないなぁ。
前も見ずに急に方向転換するからだよ」


どうやらもう少しでサラリーマンのおじさんにぶつかる所だったらしい。

チャラ男は通りすがったサラリーマンを一瞥すると私の方に意識を向けた。


…一応助けてくれたみたいね。