店のドアには「CLOSE」の看板が下がっていたけれど
ドアにカギはかかっていなかった。


ドアを開けると、最小限の灯りの中で
翔大君がなにか作業をしているようだった。


私たちに気付くと作業を中断し、いつもの笑顔で出迎えてくれた。


「どうだったー?初デート♪」


からかうようにそう聞く翔大君に
雅春さんは私を軽く抱き寄せて言った。


「いやー、楽しかったよ。
本当に恋人同士になったくらい親密になれたしね。」


その言葉を聞いて翔大君の意地悪な笑顔が崩れた。


「…まさかとは思うけど、ルールは守ってるよね…?」


翔大君はひきつった笑顔で雅春さんに確認した。


「オマエ、あのルール無理があるだろ?
いい大人が良い雰囲気になればキスくらいしちゃうだろー」


雅春さんは完全に翔大君をからかい始めていた。


この二人の小学生みたいなやり取りに
私は心の中でそっとため息をついていた。


「したの?!」


今度は私と雅春さんを睨むように交互に見て言った。


「そんなこと、し…」


私が言いかけた言葉に被せるように
雅春さんはドアに手をかけ半分身体を店から出した状態で言った。


「さあねー?
でも基本合意ならそのくらいは許せよな~♪じゃぁな♪」


そう言って、言い逃げるように雅春さんは帰って行った。



…ちょっと!雅春さん…?!


しばらくすると雅春さんの車のエンジンが遠ざかる音がした。


その音だけが店内を占有し、私はただ唖然とドアをみていた。