雅春さんは川べりの柵にもたれかかりながら
どこでもない街頭と月明かりだけの暗闇を見ながら言った。


「3年前に彼女にプロポーズしようと思ってここに来たんだ。」


その時を思い出すように、
言葉は一言一言、確実にでも
すごく弱弱しく響き渡るようだった。


私はそれを静かに心を澄まして聴いていた。


人の悲鳴のような言葉を初めて聴いた。



「来る前に些細な喧嘩をしてしまって、
彼女、あのレストランでも全然楽しそうじゃなかったんだ。」



小さく寂しそうに笑う吐息を感じた。



「だから、言えなかったんだ…プロポーズ。」



声が震えている、と思ったのは
気のせいではなかったと思う。


それでも、私は静かに
雅春さんの次の言葉を待つことしかできなかった。