「なに、ここ…」

予想外の場所に意味がわからず尋ねると、

「ラブホじゃないよ」


見透かしたようにニヤリと笑うと
男は今度は私の手をゆっくりとひいて
まるでエスコートでもするかのようにその店の中に入っていった。


店内に入ると、思ったより開放的な広さで
天井はガラス張り屋根のせいか
月明かりだけでも、かろうじて薄暗い程度で済んでいた。


今夜はブルームーンだと朝のニュースで言ってたのを思い出すくらいの見事な満月がぽっかりと浮かんでいて、
流れるように店内に入ってくる月光が、どこか神秘的な輝きを降り注いでいるかのようだった。