「優ちゃん大好きだよ。」
茂はよくそう言ってくる。
「私も大好き。ありがとう。」
私はいつも決まり台詞のようにそう返す。
本当はそこまで想ってない、そんな罪悪感が胸をよぎる。
茂にキスをされる。
抵抗することなく受け入れる。
何となくねっとりしてて気持ち悪い。
ふと智希を思う。
智希とキスしたらどんな気持ちになるだろう。
そんな事を考えているうちに、やっと茂とのキスが終わった。
今日はこれで帰る。
お互いあまり時間のない日だ。
会って、車の中で話して、キスして終わり。
私にとっては夏休みの夏期講習に行くくらい、憂鬱で要らないと思える時間だった。

21時半。
大輝が帰ってきた。
スーツからラフな家着に着替えている間に、作っておいた食事を温めて出す。
何も疑われている所はない。
大輝はテレビを付け、ニュースにチャンネルを合わせる。
特に会話はない。
私はその間スマートフォンをいじる。
ゲームをしたり、男の子達と連絡を取ったりする。
私はふとその手を止め、大輝に訪ねた。
「今週の土日はどうする?出掛ける?」
大輝は少し無言でテレビを見た後、きりの良いところで話し出した。
「最近仕事がハードだからなぁ。休みたいな。」
私はガッカリした表情を見せる。
「また?先週もどこにも行かずに休んでたじゃない。」
「優陽はパートだから時間もあるし余裕だろうけど、俺は大変なの。」
そう言い切られてしまって、私は何も言えなくなった。
仕事が大変なのは分かってる。
でもたまには出かけたい。
まだ子どももいないのだから、二人の生活を楽しみたい。
そう思ってはいけないのだろうか。
またどうせお昼頃まで寝て、その後は競馬のゲームでもやったりするんだろうな。
そう思うと何か虚しい気持ちでいっぱいになった。