駅の改札前で待ってる松葉杖をついた私に、智希はすぐに気付いて近付いてきてくれた。
身長180センチだという智希。
そう言っていたとおり、167センチの私を軽々と越して目線が高かった。
写真よりもかっこいい。
そう思った途端、頬が紅潮していく気がした。
「あ、どうも。」
人見知りだと言っていた智希は、その言葉の通り素っ気なく、そして小さく笑ってそう言った。
「初めまして。智希、やっと会えたね。」
逆に私は多少テンションを上げて話す。
お互い連絡を取っている時に呼び捨てにすることを決めていた。
でも智希は名前を呼ぶ事を躊躇っているのか、結局連絡を取っている間に私の名前を呼ぶことは無かった。

180センチの長身に、小さな顔。
細身で、ラフな服をおしゃれに着こなしていた。
上は黒いTシャツ、下はジーンズ。
そこにセンス良く合わせたシルバーアクセサリーが、智希の色気を醸し出していた。
整った顔をしている。
人懐っこそうな目には涙袋があり、可愛らしさも兼ね備えていた。
整ったまゆ毛、鼻筋は通っていて、頬骨が少し出ている。
そして唇は・・・。
唇を見た途端、またしても自分が紅潮していくのが分かった。
色っぽいなぁ。

私達は他愛も無いあいさつを済ませて、居酒屋を探し始めた。
知り合った切っ掛けは例のSNSで同じコミュニティに入っていた事。
それが“お酒好き”のコミュニティだったのだ。
その流れから、まず最初に合った日はお酒を飲みに行こうという事になっていた。
智希はビールや焼酎、ウイスキーを飲むと言っていた。
私はワインかビール。
そうなったら、やはりビールで乾杯だろう。
場所が私の地元だった事から、私がよく行く居酒屋に行く事になった。

「とりあえずビールでいいですか。」
なぜか敬語になる智希。
やはり私が7歳も年上という事を気にしているのだろうか。
それとも初対面だから敬語になっているだけだろうか。
智希との距離が遠く感じて少し淋しくなる。
「うん。ビールだよね。あ、敬語じゃなくて良いよ。」
少しでも距離を縮めようと努める私。
だが、智希はよそよそしかった。
仕方がない。
人見知りだという事だ。
ビールで乾杯した後は、お酒も入ったからか智希も自分から積極的に話をするようになっていった。