Is you is or is you ain't my baby?

同じ頃。

「こんなところでいいかしらね」

ボストンバッグに最低限の荷物をまとめ終えると、英恵は息を吐いた。

「お父さんったら、ホントに突然なんだから…」

父親とは言え上司、それも社長だ。

ベッドのうえに置いていたスマートフォンに手を伸ばそうとした時、コンコンと自室のドアをたたく音がした。

「どうぞ」

英恵が声をかけると、
「姉さん、いいかな?」

入ってきたのは、末の弟の蘇芳だった。

「あら、どうかしたの?」

そう声をかけた英恵に、
「古典の宿題で、この言葉の意味がわからないんだけど」

蘇芳が教科書とノートを見せた。

「ああ、これはねえ…」

英恵は解説した。

「姉さん、ありがとう」

蘇芳がお礼を言うと、部屋を後にした。