Is you is or is you ain't my baby?

「わたしは、そう言うのがよくわからないです」

そう言ったのは英恵だ。

「この29年間、ずーっと両親が敷いたレールのうえを歩かされていましたから。

通っていた学校も今の仕事も、全部両親に決められたことなんです。

もしかしたら、結婚も両親によって決められちゃうのかなって」

そう言って話を終わらせると、英恵は息を吐いた。

(バカバカしい…。

いい年齢の大人たちが何を言いあっているんだか)

櫻子は彼らに気づかれないように息を吐いた。

そう言っている自分も、もう24歳である。

6月にある誕生日がきたら、25歳――四捨五入をしたら30歳である――になる。

店内に沈黙が流れた。

「――皆さん」

その沈黙を破ったのは、伊地知だった。