櫻子がスマートフォンに視線を向けた。

「すみません。

今日のところはもう…」

言いにくそうに言った櫻子に、
「仕事か何か?」

京極は聞いた。

「ええ、お会いできて嬉しいのですけれども取引先の方から電話が…」

櫻子は呟くように言った。

「じゃあ、仕方がないか…。

またの機会に」

「そうですね、またメールします」

櫻子は冷めてしまったカプチーノを飲み干すと、マグカップを店員に渡した。

「では失礼します」

会釈をした櫻子に、
「またよろしく」

京極は会釈を返した。