「あー、そうでしたね」

思い出したように言った武人に、
「夕貴からは何も聞かされていないのか?」

藤本はからかうように聞いた。

「この前話を聞いたんですけど、学生時代のバレンタインデーは彼女はあげる方よりももらう方だったそうですよ」

笑いながら言った武人に、
「なるほどな」

藤本は苦笑いをした。

学生時代、夕貴はバレーボール部に所属していたのだ。

168センチも身長があることから、彼女はバレーボール部でエースアタッカーとして活躍していた。

それなりにファン――女の子限定だが――も多かったので、一部からは“王子”と言うあだ名で呼ばれていたのだそうだ。

ちなみにこれは全て、夕貴の双子の兄である朝貴から直接聞いた話である。